夢幻の姫君
「何これ、光ってる?」

隼人は無表情でそれを見つめる。心のうちで隼人は喜びと寂しさがせめぎあっていた。
 これで彼女は自分達を思い出す。だけど記憶の戻った彼女は許してくれるのだろうか?
勝手なことをした俺たちを。

「隼人?」

「はっ、いや何でもない」

隼人の不思議な行動に不思議に思いながら、続きを促す。

「意識を失う前の君の力のこと覚えている?」

 美羅は記憶を戻しながら考える

「うん。急に力が漲って、周りのものが浮いて… 何か関係あるの?お札と」

「あるよ、それは――――」

隼人はそこで言葉を切り、意を決したように、言う
 衝撃的な言葉を。

「君の記憶と力の欠片なんだ」

えっ――― 美羅は止まる。でも不思議と驚きはなかった。前から知っていたかのように。
 いや、声が聞こえたときにはこうなることは分かっていたのかもしれない。

「正確に言うと、導入剤みたいなものだ。君が望めば知りたかったことが分かるはず。僕達のこととか、ね」

寂しそうに言った。そうだ、いつも彼らはこの話をすると寂しそうに笑う。

「でも―――」

美羅は迷ってしまう。急に言われたって分からない

それを分かっていたから隼人は口を開く
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