夢幻の姫君
お父さんに連れて来られたのは、施設と同じ様な子供たちがたくさんいるところだった。
 そこの入り口で

「当分はここに居てね。また会いに来るから」

私はその“お父さん”の言葉を信じ、そこでの生活を始めた。

そこの子供達はもうグループを作っていたのもあったけど、100近く居るので圧倒されて私は立ち止まっていた。

真っ白な広い部屋。窓は高いところにあって小さい私たちには、空を見ることしかできない。
 そんな中で話しかけてくれた女の子がいた。

「新しい子? 一緒に遊ぼう?!」

私の手を引っ張って、たくさんの人の中に入っていった。

「私の名前はハル。波瑠って言うの! あなたは?」

明るい少女ハルは元気に自己紹介をした。
 でも、私は――――

「名前、無いの…。でも先生は“クー”って呼んでた…」

“クー”の由来はあの父がそう呼んでいたから、そうだ。

「そうなんだ…。じゃあ私もくーって呼ぶねくーちゃん。私はハルって呼んでね!」

それが、クーと大切な友達となるハルとの出会い。
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