夢幻の姫君
ハルは、とても明るい子で、一緒に居て楽しかった。
 それに“ハル”って名前が懐かしかっただけなのかもしれない。どうして懐かしいのかわからない、自分が呼ばれていたからかもしれない。
クーに、その記憶は――無い。

ここでの生活は、ハルもいて、お父さんもたまに会いに来てくれて、楽しかった。友達もたくさんできた。ご飯もおいしくて、幸せだった。幸せだと思っていた。

 普通の生活を知らないために、これがおかしいと、子供がこんなに集まって生活していることがおかしいなんて思わなかったし、部屋についているカメラは、ここに入れない父母がそこから見ているものだと、信じこまされ、疑わなかった。

 いや、知っていても子供のクーたちは何も出来なかったのかもしれない。



そして、異変は起きる。
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