夢幻の姫君
健人はクーの部屋に戻ってきた。
 健人の異変に気づいたクーは

「何かあった?」

と言った。
 健人は薬によって黒から灰色になった髪と瞳を見ながら考えていた。
俺はどうしたら―――――

「そう。」
「えっ?」

健人の思考は悲しげに吐かれたクーの言葉に遮られた。

「私の力が必要なのね…」

どうして…と健人が思っていると、それに対してクーは

「前から力は使えたよ、今は健人の頭と心を覗いただけ。意識して使ったのは初めてだけど。疲れたよ」

クーは笑いながら答える。哀愁を漂わせるその雰囲気は3歳とは思えないほどだった。言葉だけ聴いていれば20歳そこそこの人だと思ってしまうような――――


「へぇ、もう使えるんだ。力。君にはないと思っていたよ。失敗作じゃないかとね」

嘲笑うかのように言い、入ってきた男に健人は顔をこわばらせ、クーは視線を鋭くした。


「あなたが新名翔ね。私の友達を殺した張本人――――」

クーは憎憎しいといった顔で翔を見つめた。
 対照的に彼は笑いながら答える。

「殺した? 何を言ってるの。殺したのは君だろう? “ハル”とやらの代わりに生きているのは―――」


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