夢幻の姫君
そんな日が1年続いた。

 社長から伝令で、経済学を見につけたクーは本社に行くことになった。

文学が苦手だと悟ったクーは自分の“力”を使って自動変換することにした。
 はたから見れば、もったいない力の使い方である。
健人はもちろんついて来たが、なぜか真琴までついてきた。

「学校とやらはいいの?」

クーのせいかは分からないが大人びているとはいえ、真琴は14歳。クーにいたっては4歳である。

「いいんだよ。かあさんには許可を取ったから」

しかし隼人は悪びれずに笑う。クーは高杉親子を奪ってしまったようで、内心は不安だった。

行き先はフランス。芸術の都パリへ。

 健人と真琴は興奮して、クーは呆れていた。


いったいどっちが大人なのか……

健人と一緒に生活するようになってから思うようになっていたことを、
 少年の心を忘れていないだけだ!
と思うことに強引に自分に言い聞かせた。
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