夢幻の姫君
連れ帰った当初は、ごたごたしていた4人との関係も普通になり友達のようになっていた。
 彼らは高杉宅から学校に通い、めきめき力をつけていった。

「健人さんっていい人だな。うらやましいよ」

 帰ってから優がそう言った。彼ら4人はクーのことを知らない。事情も。
クーが学校行けないのは、若いのに頭がよく、子会社を任されていたからだと思っていた。もちろんクーは小さいので、健人名義だが…

 そんなことを言った優は悪くないが、クーはうらやましいと思ってしまった。たとえ暴力を受けていたとしても、自分の親の顔を知っているみんなに。

それを見た健人はそろそろかと思い、意を決して言う。
 クーにささやく様に

「クー。貴女の親は生きていますよ。この日本で」

その言葉にクーは驚いて健人を見つめた。

「強くなって、会社を大きくして文句を言われないようにしてそこに行きませんか? それが出来たら、お願いとして聞いてあげます。真琴達には内緒ですよ……?」

健人は寂しそうに言った。やります?と聞かれたので、クーは頷いた。

今につながる歯車は動き出す――――――
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