夢幻の姫君
その日ハルは、全員を集めて言った。

「今日から私は仕事で、出かける事になった。まぁ出張みたいなもので、長い間留守にするけど後よろしくね」

いきなり言われたハルの言葉にみな唖然。先に頭が動き出した真琴は

「護衛は……?」
「なし!! 健人には連絡をよこすから安心しな!!」

その言葉にあからさまにホッとする真琴とその兄弟。しかし健人だけは寂しそうにしていた。その表情に気づけたのはハルだけだった。

「じゃぁ元気で!!」
「じゃあな。早く帰って来いよ!!」

真琴たちの言葉にハルは心が詰まった。もう自分は帰ってくるつもりはない。もう会えないのだ。自分が選んだ道だが寂しかった。

 でも親の下で生活したい、実験の事も――――の事も忘れて。
だから薬を作った。力で補強した。これで彼らのことは思い出せない。

 ……バイバイ……

ハルは心の中でそう強く思った、健人と真琴はそれが通じたようにこちらを見た。

 ハルは証拠を残さぬよう、出て親のところの前に行くべきところに向かった。
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