夢幻の姫君
「もう、真琴、さんはココに帰ってくるという事です」

呼び捨てになれた声に戸惑いながら、帰ってくるという言葉にうれしさを感じた美和子だが、疑問を抱く。

「どういう事?」

真琴は美和子が言ってもあまり家には帰ってこなかった。ハルのために。それが帰ってくるというのはいったい……

「私が、彼らの前から姿を消すからです」

笑顔で言ったその言葉に、美和子は絶句。

「それが、私の健人へのお願いでした。」

悲しそうにされましたけどね。とハルは笑う。

「何で……?」
「巻き込んでしまったから。私の人生に」

重いものを背負っていることを、美和子は初めて知った。

「本当に、ごめんなさい。名前を貸してくれてありがとう」

笑顔で言って、ハルは出て行こうとした。

「それをあの子は…」
「知らない。健人が情報を守ってくれる。あの人は忙しくなってしまうけど」

苦笑してハルは言った。

「では、美和子さん。お元気で」

美和子が何か言う前に、ハルは一瞬でその場から消えた。まるで幻のように。

 それから10年、出会う事は無かった。
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