夢幻の姫君
父さんの仕事部屋に着くと怒りを隠しきれず、力いっぱいドアを開ける。

バンッ

大きな音がしたがそれどころではない。

「父さん!!」
 
俺の顔をみた父さんは一瞬困ったような顔をしたが意地の悪い顔になった。

「どうした? そんな顔をして」

絶対知っている。そんな顔をしていた。

「ハルの居場所どこ!?」
「単刀直入だな。だが俺は知らん」
「なっ!?」

出鼻をくじかれた気がした。でもそれよりハルがいない事を父さんは知っていた。どうして俺たちには―――

「どうして? どうして俺たちに言ってくれな…」
「言ったら!!言ったらお前たちはあいつの事を聞く前に反対するだろう?」

図星だった。俺は離れたくなかった。あいつから。でもそれは俺の我侭だ。

そんな俺を見て父さんは封筒を差し出した。自分たちで読んで、どうするかは自分で―――と。
 ハルが残した俺たちへの手紙。どうすれば――――

――――もう、答えは出てるだろ?――――

男の声が聞こえた気がした。
 あれは父さんの――――
そう思いながら、怜斗達のところに急ぐ。ハルの手がかりを持って―――
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