夢幻の姫君
この手紙を見て、俺達は呆れた。
あいつは最後まで素直じゃなかった。
でもこんな事をしている暇は無い。何をしているかは不明だが、タイムリミットは10年。探さなければ。

 もうあいつがいなくなって1年が経つ。後9年しかない。あいつは言葉を実行してしまう。急がなくては……


幼いあいつは国外には出られない。なら日本にいるはず――――
 それなのに見つからない、月日だけが過ぎてゆく――――

2年、5年、9年――――

残り1年になって、父さんに頼った。別ルートで探していた父に。

「父さん!! どこだかわかる?」
「遅かったな。任務のときはもっと早く頼むべきだ。残り時間が少ないときだと、相手が困る。 しかし気づくのはいつも失ってしまった後だ」

最初の言葉以外意味がわからない。任務? 父さんはずっとハルについていたはず……

 そんな俺に気づいてか、しらずか言葉を続ける。

「あいつの本当の名前。あいつの祖先は陰陽師だったらしい。その流れがあれば成功すると思っていたんだろう……」

何の話だ……? 成功?何が? 新名って奴がハルを狙っているといっていたけど、関係あるのか?

「本当の名前は?」

しかし耐え切れず訊く

「下の名前はわからない。なにせつける前に奪ってしまったからな。苗字は【桐生】。我が社で働いている中にも【桐生】はいる。そこはお前が探れ。後は怜たちに任せろ」

最初のほうはやはり意味が分からなかったが、手がかりを見つけた俺はもう動いていた。

―――もう一度。出会うために―――
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