夢幻の姫君
「【ヴェリノウス】?」

ズキッ

「うっ……」

頭が……痛い。
 その事だけ脳が思い出すのを拒否しているかのようだ。

「いい。思い出すな」

私の様子を見た隼人が慌てて止める。

「じゃあ、【ハル】になった理由は?」
「私は波瑠の変わりに生きているから。それがどうしたの?」

隼人は驚きのまま止まっている。信じられないようにしている。

 私の記憶は、新名の事だけではないの?
思い出すのを拒むように、考えれば考えると頭痛が酷くなる。

何がある? 何が……

あっ

「ののは?!」

私のいきなりの発言に驚いたのか、口を開けて固まった。

「……阿呆にみえるぞ。隼人」

ハッとした隼人が答える。

「阿呆と言うな。……さっき目が覚めたらしい。検査があるから退院は明後日だ。お前は今日だな」

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