夕陽

総司さんの手をひいてひたすら廊下を走る。
相変わらず寒そうな顔してるなぁ。
あ、土方さんだ。

「土方さん!お出かけいってきやーす!」

怒られる前にさっさと土方さんの前を立ち去る。あぶねぇ、あぶねぇ!
すぐに怒るもんね!近藤さんと違って!!

「コラアァァァァァ!廊下はしんなァァアァ!」

ありゃ。怒っちゃった。

「んじゃあいってきますね!お土産は期待しないでください!!」

相変わらず総司さんは苦虫を踏み潰した顔して。
これはさっさと甘味処いったほうがいいよね。
しかも今日は新しく発見した秘密基地に行きたいのだ。
総司さんの体調なの気にしている暇はない。総司さんあそこみたらきっと元気になるだろうなぁ。

なんか最近新撰組に来てから素の自分に慣れている気がする。
高校生までは、人に気に入ってもらえるように、
小学校5年生の頃みたいにならないように。
必死に自分の感情を押し殺して、『作り物の自分、みんなが好きな、頼りがいのある私』を演じてきた。
つまらない。周りの人に必死に媚売って。
でもそれがある一部の人に反感を持たれてしまって。
どうすればいいことがわからなくなってしまうことが何度かあった。


・・・でも。
でも新撰組に来てからはそんなことはない。
ありのままの自分、素である自分が必要とされている。
自意識過剰かもしれないけど、心は軽くなって。
自分の過去を思い出さなくなった。
精神安定剤に頼らなくても、私は生きていける。


暫く走って、ちょうどいい感じに体が温まってきた。
「総司さん?着きましたよ!女将さぁん!
餡蜜4個と、お団子あんことたれとそれぞれ10個ずつ!!」

「あと饅頭10個!大福10個!」

「さりげに結構頼むね総司さん?!」

「あいよ!それだけかい?」

「「そうです!」」

ついた途端総司さんが元気になったに驚いて、そして声が被る。

「総司さん饅頭分けてよ?
団子も分けようね!!」

「当たり前ですよ。だから団子わざわざ頼まなかったんですよぉ?」

ニヤニヤ二人組。
近くに居た舞妓さんがあたしたち2人を見て遠くに足早で去っていく。
うん。悲しい。



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