夕陽
「・・・駄目だよぅ。す、すこしだけでいいからぁ。
お医者さん、行こう?そうすればその咳も・・。治るから!苦しいのに放っておいちゃ駄目だって!夕日が沈んでくるの!だから屯所に戻るまでに通る道の中にある医者だけでも、寄っていこう?」
「ゲホッゲホゲホ!
大丈夫ですって。智咲さんも土方さんのお節介がうつったんじゃないですか?」
苦しそうに微笑む総司さん。
・・・わたしが、1週間でも早く池田屋事件での総司さんの症状を思い出していれば・・・。防げていたのかもしれない。
私が・・・。また、私のせいで人が死んでしまう。
「ごめんなさい、総司さん。私、未来から来たのに。私がもっとしっかりしていれば・・・!」
必死に謝る。謝って許してもらおうなんて思っていない。
だけど、謝らなきゃ。私のせいだから。
「・・・智咲さん?自分を責めないでください。
これは、普通の風邪ですよ?何深刻な顔していってるんですかぁ。ホラ、もう咳も収まりました。だから屯所に戻りましょう?」
優しそうに微笑む総司さん。
・・・本当に、大丈夫なのかな。
「・・・うん」
大丈夫かと心配する自分がいるけど、思わず返事してしまう自分が恨めしかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ただいまぁ、土方さん。
ごはんなら出かける前に作っておいたので怒らないでくださいね。」
屯所に入るなり、いきなり土方と出くわした。
・・・運悪い。
「おい、聞こえてるぞ?
そんなに俺に殴ってほしいのか?」
額に青筋を浮かべる土方さん。
「え?別にそんなんじゃないですよ。
単なる思い込みですってー。じゃ、夕食準備いってきまーす」
ダダダダと走って土方から逃げる。
「…っチ。」
土方が舌打ちした気がしたけど、気にしない。気のせい、気のせい。
・・・総司さん。ふつうの風邪だといいんだけどな。