夕陽
「知らないと・・・いっておるだろうが!」
力いっぱい叫ぶ。
「えええー。知らないなら協力だけでもしてよ?ほら。この紙に、長州の計画を書いて?右手だけは解いてあげるからさ。」
そういって右手を縄から解き、紙と筆を渡す。
「アー、あと、開いた右手で私を殺そうなんかしても無駄、だからね?」
思い出したように言う。
それでも古高は紙に何かを書くことを、ためらっている。
「うーん。早く書いてよ?こっちも待ってるんだからさ。そんなに人を待たせるのが好きなのかこの豚」
手に持っていたろうそくに火をつける。
それをみた古高が、躊躇いつつもあるが、紙に何かを書き始める。
「ふーん。『御所に火を放ち佐幕派公卿の中川宮を幽閉し京都守護職の松平容保以下佐幕派大名を殺害し、天皇を長州へ連れ去ろうとしている。古高俊太郎』ねぇ・・・。まぁあと10枚くらい書いてよ?まぁなくなったりしたらあれだから・・・ね?」
渋々古高くんは10枚書いてくれました。
「ありがとぉ♪じゃあね?」
古高俊太郎の自白からか不意に、つるされている上部を見る。足の甲には五寸釘をうたれ、傷口に蝋の溶けたのを。流し込んである。
「・・・。痛い?」
当たり前のことだけど聞く。
「・・・当たり前だろうが。」
「・・・よく、吐かなかったね。」
「・・・当たり前だろうが。」
古高くんの言葉を聴いて、自分のしていることは古高くんが耐えた傷の痛さを無駄にすることに気づく。
「・・・ごめんね。でも、私は・・・。」
「紙に本当のことをかいたわたしもわたしだ。君がきにすることじゃない」
「・・・うん。じゃあね」
最後にそうつぶやいて智咲は蔵を出た。