夕陽
「えい、たろ・・・?なんでここに・・・」
窓にもたれかかって月を見ている。
後ろ姿だけじゃわからない。
「・・・待ってたよ?」
そういってゆっくりと振り向いて。
「・・・何その格好」
・・・あ。猫のコスプレだ。なんかせっかくのシリアス雰囲気台無しだね
「・・・まぁそこは気にしない。とりあえず何でここにいるの?」
「吉田稔麿。そういえばわかるかな?」
吉田稔麿。幼名吉田栄太郎。池田屋事件で斬殺されるひと。
「栄太郎が・・?なんで・・?なんで総司さんが倒れてるの?」
「まぁ。労咳が治りきってないだろうね?1日血を飲ませただけじゃ治らない。咳が止まるまで飲ませなきゃ。たかが薬されど薬。まあ、油断は禁物ってこと。早く飲ませなきゃねー。今でも相当苦しいだろうに。ま、飲ませるのは・・・。」
急いで総司さんのところに行く。
「飲ませるのは、俺が死んでから。この意味わかる?」
立ちふさがれる。私のほうが総司さんの近くにいたのに、道をさえぎるように私の前に立つ。・・・早い。
「栄太郎が・・・死ねばいいんだよね」
腰にさしてある夕陽をゆっくりと抜き始める。栄太郎も、朝陽を抜く。
二つの太陽が、月夜に輝いた。