夕陽



チッ

耳の端が切れる。気にしない。


ズシャァァ!

肩が切れる。気にしない。



ズシャッ!


栄太郎の心臓を突く。栄太郎は復活。



「・・んで!なんで死なないの!なんでまた生き返るの!なんで・・・。なんで!!」


「それは僕も同じ。なんで死なないの?まぁ、理由は、鬼だから。」


いくら身体が復活しても、服は復活してくれない。どんどんボロボロになって、どんどん血が染み付いていく。



思い切り栄太郎の腹を蹴り、倒れた栄太郎に馬乗りする。力の差で突き飛ばされる。だが心臓を突いて復活している間に馬乗り。




どんどん傷をつけていく。栄太郎が刀で防御する。私は栄太郎が防御できないように両腕を刀で斬る。流石に栄太郎も顔を歪める。
芽生えた罪悪心を心の隅においやって、狂ったように傷をつけていく。復活はギリギリのラインでできないように。



「・・・っふぇ・・・。うぅぅ・・。ごめ・・なさぃ。に、さま・・。うぇえぇ。」


傷だらけの栄太郎の身体に私の涙が落ちてくる。
それをみかねた栄太郎が、私を励ますように話し始める。


「・・・。智咲。ここは栄太郎として話す。僕は、ただ単に死にたかったんじゃない。看取ってもらいながら死んでいきたい。涙を流してもらいたい。この世に少しの未練と幸福の気持ちを抱きながら死んでいきたい。
・・・でも鬼になったからそれじゃかなわない夢だ。
孤独に死んでいくのは、嫌だ。一人で最後まで生き残るのは嫌なんだ。」



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