夕陽
無我夢中で総司さんの手を引いて、壬生寺まで着く。
そこでいったん手を離す。
総司さんに向き直る。
「・・・総司さん。ごめんなさい。すごく失礼だったよね。私でもなんでこんな行動に出たのかもわからないけど・・。あの、口・・・屯所に戻ったら十分に洗い流してね?」
自分で言っておきながら、なんとも切ないものだ。
「それと・・。あの、労咳が治るまで・・・恋仲とやらを、作らないで・・・?えと!そんな!束縛とかいうつもりじゃなくて・・・。その・・。」
思ったことをなかなかいえない自分がもどかしい。
「血を飲んでいるところを目撃されたら面倒になりそうなのでっ!!あああの!好きとかそういう感情じゃないから!!べべべべつに勘違いとか、しないで!!」
ああ。自分が言いたいのはこうじゃないのに。でも自分でもわからない。何をいいたいのか、わかんない。
「大丈夫ですよ。そういう感情じゃないことくらい、わかってますから。」
そういって今まで黙っていた総司さんが苦しそうに笑う。
「じゃあ、先に屯所に戻ってますね」
そういって総司さんは壬生寺を後にした。
智咲の頬に、温かいものが伝う。
「・・・っなんで・・。何で?なんで私は総司さんの恋を邪魔したがるの?胸の中にあるこのどろどろとした感情は何?わっかんないぃ!わからないよぉ・・。
っふぅ。うぅぅ。うぇえええ。」
智咲は泣き崩れた。
ふわりと智咲に誰かが羽織をかぶせる。
「・・・?誰・・・」
暖かい、安心するにおい。
「・・・総司、さん・・・?」