夕陽
「智咲さん?屯所に戻りましょう?泣いてばかりいちゃせっかくのお顔が台無しですよ・・・?」
総司さんは優しく笑う。
「・・・え?なんでいるの?」
「なんでって・・。階段を降りようとしたら智咲さんの泣き声が聞こえたものですから。」
「・・・そんなにうるさかった?」
「ええ。結構聞こえましたよ?」
うわぁー恥ずかしい。
「・・・総司さん、あの医者の娘さんのこと、その、好きなの・・・?」
「うーん。そういうのじゃありませんよ」
「でも前、ずっと前だった気がするけど、総司さん好きな人いるって。」
「まぁ。いるはいるんですけど・・。」
「・・・!!!駄目!・・じゃなくって両想いになりそう?」
一瞬出てしまった自分の感情をしまいこんで、聞く。あぁ。胸の鼓動が五月蠅い。
「・・・わかりませんねぇ。私が片思いなだけかもしれません」
悲しそうに総司さんは笑う。
ズキン、と胸が痛くなる。わかった気がする。総司さんに近寄ってきた女の人が仲良くってそんでもって総司さんに抱いた感情も、総司さんに対するこの気持ちも。
私は、総司さんのことが好きなんだ。
かなわないかもしれない。でも、好きなんだ。総司さんがほかの人を好きでも。それでも総司さんが好きなんだ。
涙があふれ出す。止まらない。止まってくれない。
「ちょ、どうしたんですか智咲さん?!どこか痛いですか!」
「・・・ううー。総司さん、今私が言うことは、聞き流してくださいね」