夕陽



「・・・そうか。辛かったら、すぐに言うんだよ。」

「・・・はい!」


近藤さんは優しいお父さんのような笑顔で笑う。


「じゃあ部屋戻ってますね。」


一旦部屋に戻って寝よう。寝て、頭を落ち着かせよう。




「あぁ。じゃあゆっくり休むといい。」



「はい。失礼しました。」


ゆっくりと襖を閉めて、部屋に戻る。思わず全身鏡で自分の姿を見る。



眼帯をして。
包帯だらけで。
着物でみえないけど肩にはさらしを巻いて。




自分の記憶がないうちに、どれだけ暴れ回っていただろうか。
想像するだけで怖い。
自分の記憶がないのに自分が勝手に動き回っていることが。
知らないうちに人をたくさん殺していたことが。
怖い。怖い怖い怖い怖い怖い怖い!




「あぅ、ああああ!!」


髪の毛をかきむしる。


精神が壊れてしまいそう。
いつまた起きるか分からない『覚醒』に、怯えて生活し続けるのか。




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