夕陽




「何を苦しんでいるの?」


不意に後ろから声がする。振り向く。あれ。このパターンは!


「やっぱり・・・。後ろから驚かすの、すきなの?」



もう逢えないと思っていた、懐かしい人。でも前来世とかで会おうとか言ってなかったけ。
あきれ気味に言う。


「あはは。僕はもう死んでいるから、実際に逢えない。だから夢の中で会うことしか出来ない。まぁ、来世でもたぶん逢えるよ。」


あ、声に出てた。


「・・・うーん。まぁどうでもいいけど。」


「・・・。まぁとりあえず、何を苦しんでいるの?何が苦しいの?俺でよければお悩み相談に乗るよ?」

少し悲しそうな顔をした後、両手を広げる。私を待っているとでも言わんかのように。私はその両手の中に入って、懐かしい兄のもとへと飛び込む。


「・・・悩みは、色々あるよ。それよりもさ、『俺』か『僕』かどっちかにしてよ。聞き取りにくいし。」


「まあそれは僕の個性だから。」


あはは、と笑ってごまかす。


「・・・・。もう、夢のなかでしか逢えないの?」

「まぁ、死んだからね」

「・・・なんかごめん」

「気にすることじゃないよ」

「・・・でも」

「気にしなくていいって。それで?今は何のお悩みがあってここに来たのかな?」


頭をなでながら栄太郎は言う。なんか落ち着くー。



「・・えっと。記憶にないはずの『覚醒』が、夢に出てきたり!そんで・・・。」


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