夕陽
んじゃっと言ってずっと抱きしめていた腕を放して、少し離れて、頭に敬礼のポーズをとって栄太郎は段々と消えていく。
「え・・・ッ待って!まだ聞きたいことが・・・!駄目ぇ!!駄目ッ行かないで!えいたろ・・」
急いで栄太郎の傍へ駆け寄る。でも通り抜けて行ってしまう。
「い、いかないで!!嫌だよぉ・・・。」
また逢える、そう分かっていても悲しい・・。
どんどん夢が薄れていく。どんどん世界が歪んでいく。
もう、朝・・・?
・・・・・・・・・・・・
「智咲さん!智咲さん!!!」
私を呼ぶ声で目覚める。
「・・・ん?総司さん?だよね・・。」
「大丈夫ですか?うなされてましたよ?」
「え・・・?」
本当だ。汗がびっしょり。
「・・・大丈夫。私はまだ、大丈夫。」
自分にも言い聞かせるように言った。
「・・・そうですか。何かきついことがあったら言ってくださいね?」
総司さんはいつもの優しい笑顔で言う。
「・・・うん。」
「あ、それと、女中の仕事は肩の傷が治ってからでいいって土方さんが言ってましたよ?」
「・・・そうなの。・・・ありがとっ!!」
うれしくなって、笑顔で言う。あの地獄の女中をしばらく休めることもあるけれど、何より土方さんの心遣いが嬉しかった。
総司さんの顔が赤くなる。
「・・・?」
「そういうのは、私じゃなくて土方さんに言ってください。じゃ、私はこれで!」
総司さんは顔を隠すように部屋を出て行った。