夕陽
ゆっくりと智咲が近付いてくる。
手には、・・・縄。何で?
「な・ん・で・嫌な夢なの?」
近付くなり、僕に跨って、屈んで目線を合わせて、顔を近くする。
なんか夢を思い出して顔が赤くなり、智咲から顔を背ける。
「・・別に、智咲には関係ないから。」
「・・・・・・。なんか平助顔赤い。熱でもあるの?」
無理矢理顔を智咲の方へと向けられて、額を合わせる。
・・・顔近い。夢思い出す。
「・・・お願い顔近いからどけて。」
「・・・?うん。」
渋々顔を退ける智咲。
「・・・なんか平助、いつにも増して無愛想・・・。なんかあったぁ?」
まさにお前のせいだから!!と言うわけにもいかず。
「・・・別にぃ?」
あんまり気の利いた返事もできない。なんかもどかしい。
「・・・いつにも増して冷たいし。」
口を尖らせる。何か凄く夢と重なる・・・。
「朝だから機嫌悪いんだ。で、用は?」
必死に考え出した理由で紛らわせる。
「あ!そうだった!えっとね!春ちゃんが来るの!」
「・・・春?」
聞いたことのない名前で、首を傾げる。