夕陽
私は旅にでることにした。
旅なら、暇をしのげることが出来る。
何より、体をひたすら動かすことで。
頭が冴えているときは全力で走って何も考えない。
何かを考えるのが面倒になったときは、ゆっくり歩いて。
いつも体を動かしていた私は、しょっちゅう食べ物を欲する。
食べなくてもいいんだろうけど、食欲はある。
エネルギーが必要だから。生きるための、エネルギーが。
そんなものいらないのに。
そう思ってがむしゃらに走って・・・とかそんな生活を繰り返していたら、いつかはお金は尽きる。
倒れそうになってふらふらとした体を必死に動かして、ある家に転がり込んだ。
『一晩でいいので、泊めてください。』
『いいですよ。流れ人さんですよね?そのかわり、旅の話を聞かせてくださいな。』
一晩はあっという間に過ぎて、私は“楽しい”を覚えた。
人と対等に話すこと。
人と対等に接すること。
人に仕えることしか知らなかった私は。
どれも新鮮だった。