夕陽

私は旅にでることにした。


旅なら、暇をしのげることが出来る。



何より、体をひたすら動かすことで。


頭が冴えているときは全力で走って何も考えない。


何かを考えるのが面倒になったときは、ゆっくり歩いて。




いつも体を動かしていた私は、しょっちゅう食べ物を欲する。


食べなくてもいいんだろうけど、食欲はある。
エネルギーが必要だから。生きるための、エネルギーが。



そんなものいらないのに。



そう思ってがむしゃらに走って・・・とかそんな生活を繰り返していたら、いつかはお金は尽きる。



倒れそうになってふらふらとした体を必死に動かして、ある家に転がり込んだ。




『一晩でいいので、泊めてください。』


『いいですよ。流れ人さんですよね?そのかわり、旅の話を聞かせてくださいな。』




一晩はあっという間に過ぎて、私は“楽しい”を覚えた。



人と対等に話すこと。
人と対等に接すること。


人に仕えることしか知らなかった私は。




どれも新鮮だった。






< 422 / 462 >

この作品をシェア

pagetop