夕陽
お姉ちゃんが最後に言った言葉。
『ごめんね。』
ただ一言。
私が今まで殺してきた人々は、呪うとか無念とかそんな類の言葉ばっかりだったのに、謝られたことはなかった。
お姉ちゃんの最後の言葉を聞いて、私は訳がわからなくなった。
なんで?お姉ちゃんはなんで謝るの?私とずっと一緒だよ?
別れるわけじゃあるまいし。
私とずっと一緒に過ごすんだよ?お姉ちゃんはいつも私に語りかけてくれるでしょ?
でも、どれだけ望んでも、お姉ちゃんの声は聞こえない。お姉ちゃんの感情は流れ込んでこない。お姉ちゃんを喰べたのに。骨の髄まで、喰べたのに。
いっぺんのかけらも残らないほど、喰べたのに。
助けを求めても、お姉ちゃんはもういない。
ある日、私は孕んだ。子供を授かったんだ。子供を育てる機能はないはず。
体を解剖しても子供を授かる機能はなかった。
また訳がわからなくなる。
でも、ひとつだけ嬉しいことが起こった。
また、お姉ちゃんの声が聞こえるのだ。
私が問いかけると、必ず答えてくれる。
私のお腹には、お姉ちゃんがいるんだ。
そう直感した。ああ、私がお姉ちゃんを喰べたのは間違っていなかった。
私は間違っていない。