夕陽
「今じゃなきゃ・・・ッがほ、ゲホッ私・・・動かない。」
「・・・トシ。掘っておくだけ、掘っておいたらどうだ。」
近藤さんは私の体調を見て焦る。
「・・・掘るだけだぞ。お前、すぐにここに埋まろうとするなよ。」
土方さんは私を指差す。
その表情は、どこかしら悲しそうだった。
「・・・智咲さん、駄目ですよ。ここは誰も入っちゃいけない墓穴なんですから」
「そしたら墓穴の意味・・・ゲホッ、ないよ?」
冗談で言ったつもりだった。
ぎゅっと、暖かい落ち着くにおいが私の体を包み込む。
「・・・駄目ですよ・・・ッ本当に。」
その声を聞いたとたん、吹っ切れたように私の頬に温かい何かが伝う。
「しに、たくない・・・ッでも、わかるの・・・!!自分の体もう駄目だってぇ・・・死にたくないよ・・・ッ」
私の首には、数珠の食い込んだ後がついていた。
「大丈夫です。死にません。智咲さんは、死にません。」
「ううぅ~~ッ」
しばらく私は精一杯泣いて、泣き止んだら土方さんと近藤さんが一生懸命掘っている墓穴を総司が手伝いに行った。
私の身長よりも大きい墓穴ができた。まるで、お前の居場所はここではない、と言ってるようだった。
「さぁ、屯所に戻ろうか。」