夕陽



「なんで・・・?!」


平助がすぐに総司に抱きかかえられている智咲に駆け寄り、頬をぺちぺちとたたく。


表情が歪むことも、声が漏れることもない。



「なんで・・・!!」



どれだけたたいても、どれだけ声をかけても。



何も変わらず、今にも起きてきそうな、眠っているような顔しか、見ることができない。



「・・・部屋に、戻ってもいいですか。」


沖田が淡々と言う。


「・・・!なんでそんなに平然といえるんだよ?!」


平助が沖田に掴みかかる。



「やめろ、平助・・・」


原田が止めても、平助はとまらない。



「なんで!智咲の一番近くにいたんじゃないのかよ?!」


「平助!やめろ!」


「・・・実感が、ないんです。智咲さんが今にも起きそうで・・・。智咲さんが起きて、泣き顔をさらすわけにはいかないでしょう?」



沖田が表情をゆがめる。



ゆっくりと、平助は沖田から離れる。




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