夕陽
あれから、何年が経っただろうか。
私は、智咲さんが治してくれたはずの労咳が、再発していた。
医者いわく、一回は治ったんだろうけどまた新しい菌でうつったらしい。
沖田は、新撰組を離脱させられて近藤の家で療養している。
病魔に蝕まれて、少しずつ弱っていく体を感じながら。
「智咲さんは、今頃幸せでしょうか。」
もう自分は永くはない。
智咲さんも、そういう状況だったのだろうか。
「ああ、智咲さんに逢いたい。」
庭に飛んでいる蝶に手を伸ばしながら、呟く。
ゆっくりと、力が抜けていく。
ゆっくりと、倒れていく。
ゆっくりと、もう開かない瞼を閉じていく。