夕陽


「ぐぅ・・・」

お父さんが呻く。

「うわぁぁぁっ」

包丁を持ってない男をみた店主は、
男に飛び掛かった。

「いまだぁ!皆飛び掛かれ!」

男は取り押さえられた。


「ーーーー(父の名前)?!
ーーーー?!お願い、死なないで!!!」

お母さんが叫んでいる。

お父さんのお腹には・・・


男の手から離れた包丁が刺さっていた。

それを見た私はひたすら泣き叫ぶ。


「あなた!あなた!!死なないで!
あなたがいれば、私なにもいらない!
智咲だって!」

お母さんが叫ぶ。

お父さんが苦しそうにしゃべる。

「俺だって・・・
君さえ・・・いれば
何もい・・らな・・い。
智咲は君・・・の心を、俺に惹く・・ための
ものだった。
すまな・・い。
こんなことでしか君・・・の、
心・・・を繋ぎ止めること・・・が
できなかった、俺を・・・

許してくれ。」


そのあとお父さんは呼吸をしなくなった。

「嫌あああああああああああああああっ
私だって!
私だって同じよ!
私にはあなたしかいない!
私を暗闇から救ってくれたのは、
あなたなの!
お願い、死なないでよおおおおおおおっ!」

お母さんが叫ぶ。当時2歳の私は、
泣き叫ぶことしかできなかった。

「うぇええええええっ」

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