夕陽


その次の日、お父さんの葬儀が行われた。

2歳ながらも思った。

私が、お医者さんだったなら・・・
おとうさんは生きていたかもしれない。


葬儀中お母さんはずっと放心状態で、
目は死んでいた。

家に帰るとお母さんは私に向かってほほ笑む。

私は何故かすごく怖くなった。

「おかあ・・さん?」

「お父さんはね、私の希望の光なの。」

私の言葉を遮って、お母さんは喋る。

「昔、お母さんはね、
悪いことばっかりしていたわ。
その時に出会ったのが、お父さん。
一目見ただけで運命の人と感じることが
できたわ。」

お母さんは未だ死んだ目をしているが、
どこか懐かしそう。


「その後、お父さんと交際し始めて、
万引きも恐喝もリストカットも麻薬も辞めた。
悪いことからすべて足を洗い流したのよ。
それをすすめてくれたのが、
お父さん。
すごく優しかった。
それから結婚して、
あなたが生まれたわ。
私は思った。
この子がいれば、
もっとーーーー(父の名前)は
私のことを好きになってくれるかもしれない。
一生懸命ーーーー(父の名前)とあなたを育てたわ。
そのうち、私との仲も絆も、
もっと深まっていった。
嬉しかった。」

難しい言葉ばかりで、私は理解できなかった。

それでもお母さんは続ける。

「あなたはね、
私とーーーー(父の名前)の絆を深めた
天使でもある。
逆に私からーーーー(父の名前)を奪った悪魔でもある。
ーーーー(父の名前)との絆を深めるのなんて、
あなたがいなくてもできるわ。
ただあなたをつかっててっとり早く絆を深めたかっただけ。
ーーーー(父の名前)も、同じ考えだったの。

・・・・・あんたなんて、
生まれてこなければよかったのよ。」

私は2歳だから、首をかしげるしかできなかった。
お父さんに狂ったお母さんを助けて、
そう縋ることしかできなかった。
・・・・お父さんも、お母さんと同じ考え。

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