夕陽

「はぁい。
わかってますよぉ。」

そういって渋々沖田と智咲は
土方の部屋から出て行く。

「はぁ。
あせる必要なかったですね。」

沖田がゲッソリとした顔で言う。

「ですよね。
もぉ本当あせったんですから。」

智咲もふぅ、と溜息をつく。

「そういえば、
なんで智咲さん、
土方さんにだけ敬語を使わないんですか?」

沖田が訊ねる。

「あぁ
もぉ、慣れっていいますか。
案外土方さんには敬語使いたくないんです。
負けてる気がして。」

智咲は負けないぞとでもいうように
腕まくりをする。

「そうなんですかぁ。
じゃあ私にも敬語使わなくっても
いいですよ。
そのほうが堅苦しくない感じですし!」

沖田が微笑む。

「えぇー。
悪いですよぉ。
土方さんなら躊躇いなくできますけど、
沖田さんには流石に躊躇っちゃいますよ。
まぁ、沖田さんも敬語を使ってないのなら
別ですが。」

土方は酷い言われよう。



「そうですか。
じゃあ私これから敬語使わないんで
智咲さんも使わないでくださいよ!」

「えええっ?!
やっぱり沖田さんは敬語が一番だよ!
無理はいいけど!!」

智咲は焦る。

「え、そうですかぁ。
でも智咲さんは敬語使わないでくださいねっ!
無理は禁物ですよ?」

沖田が悪戯する子供のように微笑む。

その仕草に智咲は顔が赤くなった。
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