夕陽
「ここは・・?」
「化粧部屋どす。
どうぞ、好きな着物を選んでくださいまし。」
女子が言う。
「そういえば、君の名前聞いてませんでした。
なんていうんですか?」
智咲が尋ねる。
「お春どすえ。
春とおよびになってくださいまし。
・・・あと、訊ねたいことがあるんどす。
いいですか?」
春という人は智咲に質問する。
「橘はん、名前といい、体つきといい
顔といい、女子はんですね?」
「・・・。
すごいです。そんなにわかりやすいですか?
私・・・。」
智咲はしょぼんとする。
「いいえ。うちは長年この仕事をしてたら、
わかるんですよ。
ささ。お着物をお選びになって。」
「はぁい。」
うーん。
どれにしよう。。。
・・・!
この真っ白の布地に、
黒い花がりんとしてさいている。
これがいい。
「これがいいです!
これ、いいですか?」
「ええ。もちろんどす。」
春が笑顔で返す。
「着物の着付けはうちがやりますえ。
ささ、袴を脱いでくださいまし。」
「はぁい。」
どんなこんなで、智咲は化粧も着付けも終わった。