微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)
そうだ、あんなメイドに怯み、何を関係無い事まで思いだして暗くなっているんだ。
「怖くない怖くない……ただのメイドメイドメイド……」
ベッドに座り枕を抱え込み、身体をまるめ呪文のように繰り返す。
コンコン、とドアを叩かれ、ビクリと身体が震える。
「ぼっちゃん、少しよろしいですか?」
ドア越しに例のメイドの声。
「な、何ですか?」
「夕食は何時にお召しあがりになりますか?」
「え……いや、いつも7時位ですけど……」
「お部屋にお持ちした方がよろしいでしょうか」
「い、いえ、時間になったら一階に下ります」
流石にそこまでしてもらうのは気が引ける。
「そうですか……」
しばらくの沈黙の後――
「お言葉ですが、わたしの事はメイドでは無く、家政婦とお呼び下さい」
「……」
階段を下りていく足音。
独り言をバッチリ聞かれていたようだ。
だけどそんなに大きな声で言ってないはず。
なんて地獄耳だろう……
それに自分の事、家政婦って呼べって……。
自分でメイド服着ておいて矛盾してないか?