微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)
「決めてないわ」
「……」
そんな事だろうと思ったけど。
母は「ちょっと待って」と言って、男と何事か話しているようだ。
「彼がね、あなたと話したいって」
「俺と、話?」
もしかして、俺の事を浮気相手と疑っているとかややこしい話じゃないだろうな……。
「だってほら。お父さんになるかもしれないし」
お父さん――か。
ついつい、鼻で笑ってしまう。
電話越しの母は気付いていないようだ。
「いいよ。俺も話してみたい」
出来るだけ、機嫌の良さそうな明るい声でそう答える。
「本当!? よかった……」
ホッとしたような声。
その声に少しばかり躊躇はしたが、その男に対しての第一声は決まっていた。
「はじめまして、お母さんとお付き合いさせて頂いてる――」
声が若い。
今度の相手はおそらく年下……
「おじさん――もしかして“お兄さん”かもしれないけど。母さんからいくら貰ってるの?」