微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)
「笑ったら、可愛いと思うよ」
じっと芳野さんの顔を見ると、彼女と目が合い、お互いに見つめ合う形になる。
こうしてよくよく観察するように見ると、彼女は整った顔立ちをしていると思う。
長い睫毛、奥二重のつぶらな瞳、通った鼻筋――
どちらかと言えば可愛い、というより美人の部類だ。
――ただ、表情が無い。
今の彼女は、まるで能面のようだ。
「サービスで、少しくらいは笑ってくれてもいいと思うんだけど」
「そういうサービスはございません」
ふいっと、顔を逸らされてしまう。
その反応に、思わず吹き出してしまう。
「ははっ……芳野さんって、面白いね」
「ぼっちゃん、遅刻しますよ」
はっとして、時計を見ると――
「やばい! 今日、日直だった!」
立ち上がり、鞄を持って玄関まで走る。