微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)
「ぼっちゃん、これを」
靴を履いていると、芳野さんにお弁当箱が入った布袋を渡される。
「え? あ、お弁当作ってくれたんだ……」
「ええ。お弁当も、契約に入っていますので」
……。
“契約”とか、一言多いだろ……。
――と、やばい。
のんびりしていたら本当に遅刻してしまう。
「いってきます!」
「いってらっしゃいませ。お気をつけて」
玄関を出て、車庫の横に止めてある自転車にまたがる。
急げばまだ間に合うはず。
自転車のペダルを全力でこぎながら、学校へ急ぐ。
学校は、好きじゃない。
だけど――
自転車のカゴに入れたお弁当が視界の端に入る。
ひとつだけ、楽しみが出来たかもしれない。