微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)
ガンッと調理台の上、殺虫剤を置き、さも、何事も無かったかのようにじゃが芋の皮を剥き始める芳野さん。
「申し訳ありませんでした。夕食の準備が調いましたら、御呼び致します」
と、彼女はこちらを向かないまま、早口で言い立てる。
「うん……」
二階に戻ろうと踵を返すと……
「ひっ……」
後ろから、小さく消え入りそうな声と、調理台にジャガ芋と包丁が落ちる音。
振り向けば、繁殖力と適応力に優れた、小さな黒い生き物――
が、芳野さんの目の前の壁を、カサカサと横ぎっていた。