微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)
「芳野さんって、ゴキブリ怖いんだ」
「……。驚いただけです」
料理を食卓に並べながら、素っ気無く返される。
今日のメインは肉じゃが。
他には、みそ汁、ほうれん草の胡麻和え、豆腐サラダ等々。
「いただきます。まあ、俺もゴキブリは苦手だけど……」
ゴキブリ一匹に、あんなに怯える人を初めて見た。
自室で勉強をしているとドアをノックされ、開ければ包丁を持った芳野さん。
尋常じゃない雰囲気に、何事かと思えば殺虫剤が見つからないときた。
「……。申し訳ありませんでした」
「え……?」
神妙そうに深々と頭を下げられ、動揺する俺を置いて、芳野さんは台所の奥へと消えてしまう。
何に対して謝られたのか分からず、しばし呆然とする。