微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)
「あれ? 自転車パンクしたんっすか?」
「うん。途中で。それで遅くなった」
さらりと嘘をつく。
遅くなったのはパンクのせいだけど、わざわざ自転車がこうなった理由を話す事も無い。
多分……石和田さんは、話せば心配してくれると思うけど。
心配かけたくない、と思う以上に、イジメにあってるなんて知られたくない。
同情なんてされたら、惨めで屈辱的だ。
いい人だからこそ、余計に言えない。
「あー……自転車パンクするとキツイっすよね。よかったら直しましょうか?」
「え? いいの?」
「サービスっすよ。この前のカレーのお詫びに……」
と、苦笑いしながら頭をかく石和田さん。
「ああ、あれは酷かった……」
「うっす……すんません」
あからさまに落ち込んだ様子を見せる石和田さんがおかしくて、ついつい笑ってしまう。
「ちょっ……ぼっちゃん、笑うのは酷いっすよー」
「あはは……ごめんごめん」
家の門の前に止めてあるワゴン車は新貝サービスの車で、石和田さんに自転車を積んでもらう。