微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)
「それでは、わたしはこれで……」
「あのっ……!」
一礼して踵を返す早瀬さんを引き止める。
振り返り俺の言葉を待つ彼に、言うべきか、少しだけ迷った後、口を開く。
「俺は……二人が来てくれて、よかったと思ってます」
どうしても……そう言わずにはいられなかった。
早瀬さんは、芳野さんと石和田さんが俺に迷惑を掛けていると、勘繰っていたみたいだけど……
「上手く、言えないんですけど……二人が来てから楽しいって言うか……」
早瀬さんはしばらくの間、俺の表情を窺うようにじっと見て――
「……。そうですか。石和田と……芳野も喜ぶと思います」
少し戸惑っているような表情を浮かべながらも、そう、言ってくれた。
「あ、あの……それだけです。引き止めて、すみません」
いまさらながら、恥ずかしくなる。
わざわざ引き止めてまで、言う事では無いのかもしれない。
「いいえ。ありがとうございます」
早瀬さんは気にした様子もなく、軽く口角を上げて笑い、会釈して車に戻って行った。