微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)

「奥様、なんておっしゃってました?」

少し離れた所で様子をうかがっていたらしい“お手伝いさん”は、事務的な様子で問い掛けて来る。

「……」

靴を脱いで玄関に上がると、彼女を無視するように二階の自分の部屋に向かう。

自分の部屋に入り、ドアの鍵を閉めるとふっと体の力が抜ける。

つい、二週間程前。

高校に入学したばかりでまだ学校に馴染めていないし、授業中以外は話すクラスメイトもおらず気が重い。

――これから先も馴染めそうにないけど。

その上、家に帰れば見ず知らずの女が家政婦として居座ってるし……。

家政婦、ハウスキーパー、お手伝い……言い方は違えど似たような物だと思う。

だけど彼女は家政婦と言うには若すぎる気がする。

あの格好のせいもあるが「メイドさん」と言われたほうがしっくりとくる。
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