微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)
「……確かに。お弁当は契約だから作ったのでは無く、わたしの自己判断です」
「……え? あの……つまり、どういう事?」
あれだけ契約だと念を押していたのに、何かあるのだろうか。
「……料理を褒められて、嬉しかったんです」
うつむいたまま、消え入りそうな声で言われた台詞……
「……」
思わず、芳野さんを凝視する。
顔が、少し赤い気がする……
カン、と林檎を乗せたお皿をサイドテーブルに置き、逃げるように部屋を出て行ってしまった。
今の、もしかして照れていた……とか?
いつもの芳野さんなら、こういう時も澄ましていそうなんだけど……。
それこそ「料理を褒められて嬉しかった」なんて言わずに、無視されそうだ。
嬉しいような、恥ずかしいような、複雑な気分で林檎を食べる。
ゴキブリの時といい、芳野さんって意外と……わかりやすい人なのかもしれない。