微笑みは瞳の奥へ(更新休止中)
メイド服の種類に詳しい訳ではないが、いわゆる“メイド喫茶”でよく見かけるミニスカートタイプではなく、昔の洋画とかのメイドが着ていそうな、ロングで少し古めかしいデザインだった。
……まあ、どっちもメイド服だし、違いなんてどうでもいいけど。
母は、おそらくまた新しい恋人と旅行でもするんだろう。
以前にも何度かこうして前触れもなく家を空ける事があったし、あのメイドの事以外は、いまさら特別驚かない。
資産家だった父が遺した財産を、食いつぶすかのように豪遊して過ごす母をみっともないと思った事もあったけど……。
嫌う事が出来ないのは父が生きている頃、母の泣いている姿をよく見ていたからだろうか。
母は泣いている理由を正直に話した事は無かったし、俺の前では無理して明るくしていたようだが、一緒に暮らしていれば両親が仲たがいしている事くらいわかる。
父の――浮気相手の事で。
それもおそらくは一人、二人ではない。