水晶玉は恋模様
私が拓馬の瞳に見とれていると、拓馬が首をかしげた。

「どうした?何かごみでもついてる?」

私は慌てて首を横に振って誤魔化した。
拓馬は首をすくめて、それから手を振って部屋から出て行った。

入れ違いに、香奈枝が入ってきた。
やっぱり、香奈枝さんってかなり若いなぁ。
うちの学校の数学の先生よりは絶対若い。

「ちょっと、あんたに渡したいモノがあってね」

香奈枝はにっこりと笑って水晶玉を一瞥する。
水晶玉は相変わらず怪しく光り輝いていた。

その輝きの中に、高沢の顔が見えるような気がして、
私は俯いてしまった。
駄目だ。すぐに頭の中が高沢で一杯になっちゃう。

「あんたに渡したかったのは、これなの」

そう言って香奈枝は、タロットカードを取り出した。

「見たところ、あんた占いの才能があるよ。ちょっとレッスンを受ければ、
すぐに開花するさ。」

そして、そのタロットカードを私に渡す。

「もう少しで皆来るからね。待ってなよ。」

そう言って香奈枝は隣の椅子に腰を下ろした。
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