水晶玉は恋模様
「牡丹、何怒っちゃってんの~。」

圭子が笑いながら絡んでくる。
だけど、私にはまだ何となく許せなかった。
だって、そこまで馬鹿にすることなくない!?
私は圭子と望を睨みつけて、そっと高沢のほうに目をやった。
やっぱり、いつ見てもカッコいい……。

この前の甘甘な声。
あの声を、私のためだけに発してほしい。

――ああ、駄目駄目――

一瞬でも高沢が私のほうに来てくれるなんて、
そんな事を思ったなんて、自分が恥かしかった。

何か私、最近おかしくない?
圭子と望がそっと見つめているけど、その瞳も何だかぼやけていた。
私はまた、高沢のほうをそっと見る。

「やっだー。不審者~!」

圭子が笑って茶化すけど、それにも反発する力が無かった。
段々、望と圭子の顔が心配そうになってくる。

「どうしたの?牡丹らしくないよね?」

私は『そんな事ないよ』と首を横に振った。
だけど、自分ではうすうす感じていた。
勉強も手に付かないし、何をしても物足りない。

こんなに、高沢を好きだったなんて――。

自分でも、気付いたときにはすでに遅かったのだ。
こんなにも、気持ちが膨らんでいたなんて。
自分が一目ぼれなんて、するはず無いと思ってた。
ドラマや漫画の一目ぼれの恋愛シーンを見るたびに、
『バッカじゃない』って思ってた。
だけど、こんなにも好きだったなんて――。
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