水晶玉は恋模様
「高沢くぅ~ん!ちょっとこのプリント、持ってもらえる?」

そう言ってプリントの山を持って駆け寄ってみる。
高沢は嫌な顔一つせずに、プリントを持ってくれた。
私のアタックは、望や圭子の協力もあって、さくさく進んだ。
決意から3日。私と高沢は、普通に話をする仲になっていた。

「へぇー、日曜日、試合なんだ~。」

高沢と廊下を歩きながら喋る時間が一番幸せ。
いつしか、そう思えるようにもなっていた。

「うん。相手はかなりの強豪でさ。この前も負けたんだよ~。」

高沢は柔道部に入っている。
その細い体からは想像できないほど屈強らしいのだ。
彼の長い睫毛や、飛び跳ねたショートカットは、
彼の試合中の様子は微塵も感じさせなかった。

「ねぇ、試合、見に行きたいなぁ~。」

私は高沢に近づいた。
何センチあるのかは分からないけど、
身長はかなり高い。
栗色の瞳が、すっと私を捉える。

「……いいけど。」

一瞬の間の後、そう答えた。
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