水晶玉は恋模様
私は真っ直ぐ、屋上に走っていった。
やわらかい風が頬を撫でる。
何であの言葉が、あんなにも心に突き刺さったのかな。
彼女居るのは、知ってたのに。

「過信、してたんだな……。」

私は思わず自答していた。
自分の魅力に自信があったんだ。
高沢が自分だけを見てくれると、過信してたんだ。
だからあんなに傷ついたんだ。

「まだ、希望はあるじゃん。」

後ろから声がした。
泣きべそをかいていた私には、その声が、
まるで天使の声のように聞こえた。

「圭子……。」
「まだ、大丈夫でしょ?これからじゃん。」

圭子は私の肩を抱いた。
いつの間にか、こんなにも大人になってたんだ……。

「これからが、牡丹の頑張りどころでしょ。
スタートラインで足くじいてどうすんの。」

圭子はそう言って私から数歩離れた。
その目は、まるで母親のようだった。
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