水晶玉は恋模様
路地では高沢と、その彼女らしき人の2人が抱き合っていた。
あからさまなバカップルぶりに、私は目を覆いたくなる。

「なぁ、俺たち付き合って3週間だしさ、そろそろ名前で呼び合わない?」

どうやら2人は、春休み中に付き合い始めたらしい。
私はしばらく、路地の様子を見てみることにした。

「えぇ~?何か恥かしいよぉお。でも、いいかも。」
「だろ?だろ?じゃ、呼ぶぜ。加奈子。」
「いいよぉおお!と・も・や!!」

そう言って、『きゃあああ』と叫ぶ加奈子と呼ばれた彼女。
私はため息をついて、路地を後にした。
まったく、呆れた。秀才ぶった顔をしていたから、てっきり本当に秀才かと思ったのに。
あんな馬鹿な彼女と付き合ってるなんて。
私は脳裏に再び2人が蘇りそうになり、それを慌ててもみ消した。

「でさぁー、その路地裏で!何と高沢君とその彼女を発見したわけ!!」

喫茶店で、私は恋バナ大好きな圭子に、今日の帰り道の事を話して聞かせた。
圭子はさきほど2人で撮ったプリクラを眺めながら、
私の話を熱心に聞いていた。

「何かやだねー、その彼女。ミーハーだし」

自分がかなりのミーハーだと言う事を棚に上げて、圭子はそう言うと立ち上がった。

「じゃ、あたしそろそろ帰るね。変質者も最近多いし。」

あたしは可愛いから狙われやすいのー、と付け足して、圭子は笑いながら帰っていった。
私は渋々圭子の分のお茶の料金を払い、自分も店から出たのだった。

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