おれんじ
この、天野 茅という男はさらっ、とした茶色っぽい髪に目鼻立ちのくっきりした「イケメン」という奴だった。
「裕也の姉さんは食べないんですか?」
「遥でいいよ。私はお腹すいてないからいいや」
弟とは違い、社交的。うわこの子絶対学校のアイドルだわ。
弟はどっちかって言うと多分シビアな子だからなぁ。
「茅、いこう」
「じゃあ遥さん。また後で」
久しぶりに男の人から名前で呼ばれた。
その感覚がなんとなくくすぐったい。
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「……遥さん?」
何分かして、部屋の扉が開かれた。
そこには茅くんがいて。
「どうしたの?裕也は?」
「風呂入ってます。今日俺、ここ泊まる予定で」
「そっか。で、どうしたの?入りなよ」
そう言うと、そろっと部屋に入る茅くん。
「…もうすぐ、裕也の誕生日で俺バッシュ買ってやりたいんです。」
「バッシュ?」
「結構古いの使ってるみたいで危ないってクラスの女子が行ってたから」
「…で私に何の相談?」
バッシュの話をされても私にはさっぱりだった。だって弟がバスケをしてたことも知らなかったんだもん。
「一緒に買いに行きませんか?遥さんも選んであげて下さい」
「……は?」
一応誘いは了解してメルアドも貰ったけど…
私弟の趣味何一つ知らないからなぁ。
とりあえず、今週の日曜日は明後日。
待ち合わせ場所は何故かハチ公前。…デートか。