おれんじ



それからご飯食べた後、バッシュを選んで余った時間をゲーセンで潰した。



「くまさんのぬいぐるみ!」
「これ絶対取れねえって!」
「エリートが何言ってんの、取れないハズないじゃんかっ」
「エリート関係ねぇし!」



腕まくりをして、変に真面目な顔で大きなくまのぬいぐるみを狙う茅くんは可愛いしかっこよかった。




「お、」
「や、やった!」




何回かのチャレンジでやっと取れたくまのぬいぐるみ。すごい嬉しそうに抱く茅くんに不覚にもきゅん、とした。




「はい、」
「え。」
「遥欲しいって言ってたからあげる」



くまのぬいぐるみが渡される。これ貰っていいってこと?



「あ、りがと…」







**

別れ際、茅くんはバッシュの入ったラッピング袋を私に渡した。



「裕也さ、姉ちゃんがいること俺に話してなくてさ。」




急に語り出した。
あぁ、そうか。できない姉がいるなんて確かに誰にも言えないだろうなぁエリートの団体だもの。


「でも、いい姉ちゃんだなって言ったら性格だけは良すぎるんだって言うんだ。」






「だからこれは遥と俺からって遥が裕也に渡して」



「え、ちょ!」


「じゃあ、またメールする!」





駅の改札に走って向かう茅くん。



ちょっとびっくりしすぎて茅くんが何を言ったのか理解できなかったけど…


確かに分かったのは、私のために弟と話す機会をくれた?




そんな何気ない行動は、大したことないのかもしれないけど…



私にとってみれば、私の悩みを見透かされたような気持ちになった。




でも、そうなんだけど。






なんだかくすぐったい気持ちなのはなんで?





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