おれんじ
そんな日曜日も過ぎ、とうとう弟の誕生日になった。
せっかく茅くんと選んだんだからとバイトを休んで家に直行することにした。
家に帰るとさすが、弟の誕生日だけあって夕飯も美味しそうな洋食の匂いもするし、何よりいつも帰りの遅いお父さんの靴もあった。
(愛されてんなぁ。裕也は)
昔は恨めしくて仕方がなかったけれど。
今はバッシュを渡さないと。
あの家族の団らんの中に久々に入るだけあってすごい緊張する。
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部屋から出て、ダイニングに入ろうとすると弟とお母さんとお父さんの声がした。
あぁ、久々の声だ。
何年聞いてなかったかなぁ
ガチャ、
「ただいまー」
「おかえりなさい。あら、バイトは?」
お母さんに聞かれてヘラッと笑って「休んだの」と答えた。
そして弟の前まで行って、紙袋をそっと差し出した。
「誕生日プレゼント。
……茅くんと選んだの」
ガサ、と紙袋をあけると確かに入ってるバッシュ。
「バスケしてるんだね。私もやってたから…このメーカーが一番いいんだよ」
言い訳を並べるように私は弟に言った。
もしかして気に入らなかったらどうしよう。
なんて柄じゃないことを思いながら。
「ありがとう…、すげぇ嬉しい。俺ずっと1年の使ってたからさ」
予想外の展開。弟は嬉しそうにバッシュを見つめて私に明るく話してくれた。
「よかったじゃないか、裕也。さぁ、お姉ちゃんも座りなさい、晩御飯にしよう」
お父さんの声で私は久々に食卓に座った。
とても照れくさいけど温かい。
茅くんはもしかして私を見透かしていたのかもしれないなぁ
中3にしてやられた。
ちくしょう。
next.